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Ladies and Gentlemen,Start your Engines!

2013.01.16

 自分でいうのもなんだが、F1ファン歴は長い。60年代後半、ちょうどエンジン規定が1.5ℓから3ℓに変更された頃からずっと、最大限の好奇心をもって眺め続けてきた。最初のヒーローはダン・ガーニー操るイーグル・ウェスレイク。クリス・エイモンとフェラーリの組み合わせも鉄板だった。1967年ベルギーGPのリザルトは当時8歳の加藤少年にとって理想的なもの。ガーニーが優勝、スチュワートが2位に続き、エイモンが3位を得るという、当時僕が大好きだった三羽烏がものの見事に表彰台を独占してくれたのだ!

 ブリジット・バルドーと浮き名を流したイケメン若手チャンピオン候補セヴェールがワトキンスグレンで非業の事故死を遂げ、それをキッカケに師匠のスチュワートが引退し、一時F1熱が冷めかかった時期もあったが、ジル・ヴィルヌーヴの登場でまたぞろ熱狂し、ちょっと不良っぽいゴードン・マレー、ピケ、パトレーゼのブラバムトリオが、優等生臭漂うラウダをやっつけることを願い続けた時期もあった。

 いつの時代も僕にとって特別な思い入れの対象であるF1。しかし同じオープンホイールレースのINDYに負けている点が少なくとも1点はある。スタート前の演出、儀式性がそれだ。

 現状のF1のスタート進行はご存知の通り。グリッドについたマシーンのエンジンが各々のチームの指示で始動され、フォーメーションラップに向かう。しかしインディ500は違う。広大なサーキット全体に響き渡る“Ladies and Gentlemen,Start your engines!!”の号令も高らかに一斉に全車のエンジンに火が入り、凄まじい戦闘的サウンドが場内を一瞬にして満たすのだ。もし現場に居合わせたなら、そりゃあもう鳥肌もんの快感に襲われるに違いない!

 たとえばスーパーボウルとワールドカップ決勝戦のオープニングの演出の違いを見ればわかるように、アメリカ人はショーアップが本当にうまい。仰々しいといわれればそれまでなんだが。

 さて正月休みも明けて1週間。CGスタッフは“Start your engines”の声をかけるまでもなく全開モードで活動を再開している。昨年無事終えることができた創刊50周年をひとつの区切りとするなら、まさにリスタートを遂げる年になる。自動車雑誌として常に時代を切り開く存在であること。新しい1ページを毎号めくり続けること。CGの伝統を守るために、我々は常に革新の気概を持って、肌が粟立つような、それでいて心が浮き立つようなエネルギッシュなエンジンサウンドを奏で続けなければならない。